業界別(美容室)

美容室コンサルの、
注意点と顧問の範囲。

同業のオーナーから「2店舗目を出したい」「店販をもっと売りたい」「業務委託の美容師を入れたい」と相談される場面は多いはずです。ただ、出店には美容師法の手続きが、店販やSNSには景品表示法や薬機法の決まりが、業務委託には労働法とフリーランス法が関わります。この記事では、厚生労働省・消費者庁・自治体などの公式情報で確認できた範囲で、顧問として気をつける点と、扱う範囲の線引きをまとめます。

執筆:長尾孝太郎(株式会社GSホールディングス 代表) / 最終更新: / 12分で読めます

この記事は、コンサル開業支援を提供する株式会社GSホールディングスが書いています。構成と下書きにAIを使い、公開前に数字と制度を出典の一次資料と照合しています。法令の個別の判断は専門家にご確認ください(編集方針)。

最初に結論

美容室の顧問で注意したいのは、①美容師法(免許・美容所の開設届と検査・管理美容師) ②広告と表示(景品表示法・ステマ規制・化粧品の効能の範囲) ③業務委託の美容師(労働者性とフリーランス法)の3つです。出店の段取りや表現の考え方は助言できますが、届出や表現の可否、契約が雇用かどうかの最終判断は、保健所・社会保険労務士・弁護士などに確認するのが安全です。顧問の範囲は経営・採用・教育・数字の見方に絞って始めましょう。

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美容室の顧問で押さえる3つの決まり

美容室の顧問を始めるなら、美容師法・広告と表示・業務委託の3分野を先に押さえます。オーナーとして日々こなしてきたことでも、他店に助言する立場になると、説明の正確さが問われます。

顧問先からよく出る相談は「出店したい」「集客と店販を伸ばしたい」「人を増やしたい」の3つです。それぞれが、下の表の決まりとすぐ隣り合わせになります。

分野主な決まり顧問で関わる場面
美容師法美容師免許、美容所の開設届と検査確認、管理美容師出店・移転・増床の計画、採用と配置
広告と表示景品表示法(優良誤認・有利誤認・ステマ規制)、薬機法と医薬品等適正広告基準メニュー表・価格表示、SNS、口コミ、店販の商品説明
働き方労働基準法上の労働者性、フリーランス・事業者間取引適正化等法(令和6年11月施行)業務委託の美容師の受け入れ、契約書、報酬の決め方

どれも、あなたの助言がそのまま顧問先の行動になります。「知っている範囲で答える」から一歩進めて、根拠と相談先まで示せる状態にしておきましょう。

美容師法の基本:免許・美容所の開設届と検査・管理美容師

美容は美容師の免許がなければ業として行えず、原則として届け出て確認を受けた美容所でしか行えません。出店支援では、この手続きを計画に組み込めるかが要になります。

東京都の保健所のページでは、美容師の資格を持つ者でなければ美容を業とできないこと、美容師は政令で定める特別の事情がある場合を除き美容所以外で業を行えないことが説明されています。開設には、構造設備と衛生管理の基準に合っているかについて、保健所の確認が必要です。

項目公的機関の案内で確認できること出店支援での注意
事前相談工事着工前に設計図などを持って保健所へ相談するよう案内(東京都・香川県)物件契約や内装の発注前に、保健所への相談を工程に入れる
開設届営業開始の2週間前までに保健所へ提出(香川県の例)。従事する美容師全員の免許証の写しと、伝染性疾患の有無に関する医師の診断書などを添付提出時期や様式は自治体で異なるため、所在地の保健所で確認する
検査・確認施設の完成後に検査を受け、構造設備が基準に合うか確認を受ける。事務処理に1週間程度かかることがある(東京都の例)開店日とオープン告知は、検査の日程に余裕をもって決める
管理美容師美容師である従業者が常時2人以上いる美容所には管理美容師を置く(美容師法第12条の3)。免許取得後3年以上美容の業務に従事し、知事が指定する講習会を修了した人が対象(東京都の案内)2人目を雇う時点、2店舗目で店長を立てる時点で、要件を満たす人がいるか確認する
変更・廃止・承継従業者の異動や名称・設備の変更、廃止、事業譲渡などで届出が必要(東京都の例)。規模によっては新規開設の扱いになる移転・増床・居抜きの譲り受けを助言するときは、早めに保健所へ相談するよう伝える

検査手数料も自治体ごとに決まっています。香川県の案内では、理容所・美容所の検査手数料は16,000円です。

顧問として関わるのは、手続きを出店スケジュールに落とし込むところまでにするのが安全です。基準に合うかどうか、届出の書き方などの判断は、所在地を管轄する保健所に確認するよう案内してください。

価格表示・口コミ・SNSの助言:景品表示法とステマ規制

メニュー表や割引表示、口コミ集めを助言するときは、景品表示法の「優良誤認」「有利誤認」とステマ規制を前提にします。

消費者庁によると、景品表示法は、サービスの内容を実際より著しく優良であると示す表示(優良誤認表示)と、価格などの取引条件を実際より著しく有利であると誤認させる表示(有利誤認表示)を禁じています。わざとでなく誤って表示した場合も対象になるとされています。消費者庁は表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができ、出せなければ不当表示とみなされる仕組みもあります。

美容室の現場では、次のような表示に気をつけます。

  • 効果をうたうメニュー名や説明:「ダメージがなくなる」「髪質が生まれ変わる」など、根拠を示せない表現は優良誤認の問題になり得ます。
  • 二重価格(通常価格◯円→今月◯円):消費者庁の価格表示ガイドラインの考え方では、比較に使う価格が「最近相当期間にわたって販売されていた価格」であれば問題になりにくい一方、実際にはほとんど売っていない価格を「通常価格」として並べると不当表示のおそれがあります。
  • 口コミ・SNS投稿の依頼:令和5年10月1日から、広告であるのに広告と分からない表示(ステルスマーケティング)は景品表示法違反になりました。お店が第三者に依頼・指示した投稿も対象で、規制を受けるのは広告主であるお店側です。

たとえば「投稿してくれたら次回◯%オフ」と口コミを頼む施策は、内容を店が指示していないか、広告であることが分かる形になっているかを点検します。スタッフ個人のアカウントでの発信も、店の指示で行うなら同じ視点で整理しておくと安心です。個別の表現が違反に当たるかの判断は、消費者庁の運用基準を確認したうえで、迷う場合は弁護士に相談するよう案内してください。

店販とヘアケア商品の説明:化粧品の効能の範囲

シャンプーやトリートメントなどの化粧品は、広告で言える効能の範囲が決められています。店販のPOPやSNSの文言を助言するときは、この範囲から外れないことが前提です。

厚生労働省の「医薬品等適正広告基準」(平成29年9月29日)は、新聞・雑誌・ウェブサイト・SNSなどすべての媒体の広告を対象にしています。そのうえで、承認を要しない化粧品の効能の表現は、厚生労働省の通知「化粧品の効能の範囲の改正について」で定める範囲を超えてはならないとしています。

大阪府が掲載している効能の範囲のうち、頭皮・毛髪に関するものは次の16項目です。

区分表現の例(効能の範囲より)
清浄・におい頭皮、毛髪を清浄にする/香りにより毛髪、頭皮の不快臭を抑える
すこやかさ・うるおい頭皮、毛髪をすこやかに保つ/頭皮、毛髪にうるおいを与える/頭皮、毛髪のうるおいを保つ/毛髪の水分、油分を補い保つ
手ざわり・見た目毛髪にはり、こしを与える/毛髪をしなやかにする/クシどおりをよくする/毛髪のつやを保つ/毛髪につやを与える
フケ・カユミフケ、カユミがとれる/フケ、カユミを抑える
毛先・スタイリング裂毛、切毛、枝毛を防ぐ/髪型を整え、保持する/毛髪の帯電を防止する

つまり、「髪が生えてくる」「ダメージを修復する」のような表現は、この一覧にはありません。同じ基準では、効能や安全性を確実だと保証する表現や、最大級の表現も禁じられています。

美容室ならではの注意点もあります。基準では、医薬関係者や理容師・美容師などが推せん・指導・選用している等の広告を行ってはならないと定めています。「美容師が選んだ」「プロ推奨」といった店販の打ち出し方は、メーカーの表示や広告の作り方を含めて慎重に扱い、判断に迷うときは都道府県の薬務担当課や保健所に確認するよう案内してください。

業務委託の美容師とフリーランス法、偽装請負の注意

業務委託の美容師を受け入れる助言では、まず「その働き方が本当に業務委託か」を確かめ、そのうえでフリーランス法の義務を守る形を整えます。

東京労働局の資料によると、労働基準法上の労働者かどうかは、契約の形式や名称にかかわらず、実態から総合的に判断されます。主な判断の視点は次のとおりです。

  • 仕事の依頼を断る自由があるか
  • 仕事量や進め方を自分で決めているか(業務遂行上の指揮監督)
  • 勤務の場所や時間を店に決められていないか(拘束性)
  • 代わりの人を立てることが認められているか(代替性)
  • 報酬が、指揮監督のもとで働いた時間の対価になっていないか
  • 補強する要素として、道具を自分で用意しているかなどの事業者性、他店で働けるかなどの専属性

契約書が「業務委託」でも、出勤時間やシフト、施術の手順まで店が細かく指示していれば、労働者と判断される可能性があります。いわゆる偽装請負と呼ばれる状態で、その場合は労働基準法などが適用されます。厚生労働省は令和6年11月から、全国の労働基準監督署に「労働者性に疑義がある方」の相談窓口を設けています。

実態として業務委託にあたる場合は、令和6年11月1日施行のフリーランス・事業者間取引適正化等法(フリーランス法)が関係します。従業員を使っている美容室(法人で役員がいる場合も含む)が、従業員を使っていない個人の美容師に業務を委託するときの主な義務は次のとおりです。

義務対象となる取引
取引条件の明示(業務内容・報酬額・支払期日など。書面または電磁的方法)期間を問わない
給付を受け取った日から60日以内の報酬支払期間を問わない
ハラスメント対策の体制整備期間を問わない
募集情報を正確に表示する広告などでフリーランスを募集する場合
受領拒否・報酬の減額などの禁止行為1か月以上の業務委託
育児・介護などとの両立への配慮、中途解除の原則30日前までの予告6か月以上の業務委託

出典:内閣官房・公正取引委員会・中小企業庁・厚生労働省「フリーランス・事業者間取引適正化等法」パンフレット。

顧問として扱えるのは、業務委託と雇用のどちらが自店の方針に合うかを一緒に考え、取引条件の項目をそろえるところまでです。個別の契約が雇用に当たるか、契約書の文言が適切かは、社会保険労務士や弁護士に確認するよう案内してください。取引の相談は公正取引委員会や中小企業庁、就業環境の相談は都道府県労働局が窓口とされています。

顧問の範囲の線引き表:扱う・つなぐ・扱わない

顧問の範囲は「経営の仕組みづくり」に絞り、資格や行政の判断が必要なことは専門家につなぎます。始める前に、下の3つに分けて書き出しておきましょう。

区分内容の例
扱ってよいこと経営数字の見方(客数・客単価・再来率・店販比率)、採用と定着の進め方、アシスタント教育の仕組み、メニューと価格の組み立て方、出店計画の段取り表づくり、表示を点検する手順づくり、オーナーの時間の使い方
専門家につなぐこと美容所の基準・届出(所在地の保健所)、化粧品の広告表現(都道府県の薬務担当課・保健所)、表示や契約の法的判断(弁護士)、雇用か業務委託かの判断・就業規則・助成金(社会保険労務士)、税務・決算(税理士)、出店資金の融資(財務コンサル・金融機関)
扱わないこと無資格者による施術や美容所以外での営業を前提にした計画、施術の安全や薬剤の使い方に関する個別の指示、効果を断定する広告文の作成、実態が雇用の人を業務委託として扱う仕組みづくり、内容を指示した口コミ投稿の仕組みづくり

線引きは、初回面談の時点で顧問先に見せておくのがおすすめです。「それは保健所に確認しましょう」と言える顧問のほうが、長く信頼されます。顧問先になる美容室がどんな悩みを抱えやすいか、商品の作り方は美容室経営者がコンサルを始めるにはで、顧問料の決め方は美容室向けコンサルの商品と顧問料で、顧問先の見つけ方は顧問先になる美容室オーナーの集め方で解説しています。

自分の顧問サービスの広告と、契約書に書いておくこと

あなた自身の顧問サービスの広告でも、成果を約束しないことが基本です。そのうえで、顧問の範囲と免責を契約書に書いておきます。

広告と表示の章で見た優良誤認の考え方は、顧問サービスにもそのまま当てはまります。「顧問先の売上が◯倍に」「新規客が毎月◯人増える」のような表現は、根拠を示せなければ使わないようにしましょう。取り組む内容や面談の進め方を具体的に書くほうが、同業のオーナーには伝わります。

契約書には、次の点を入れておくと安心です。

  • 顧問の範囲(上の表の「扱ってよいこと」)と、対象外の業務(届出の代行、法律・税務・労務の個別判断など)
  • 保健所や専門家の確認が必要な事項は、顧問先が自ら確認すること
  • 広告・SNS・店販表示の最終的な掲載判断と責任は、顧問先にあること
  • 成果を保証しないこと、損害賠償の上限

契約書の項目全体は顧問契約の始め方にチェック表があります。最初の1本は弁護士に確認してもらうと安心です。

規制を踏まえた顧問の形は、ここまでの手順で自分で作れます。そのうえで「同業のオーナーに見つけてもらう集客の仕組み」まで任せたい方向けの選択肢もあります。当社(株式会社GSホールディングス)では、財務コンサルとの立ち上げ支援と、記事・LP・無料診断・LINE・面談予約などの集客システムの構築・運営をセットにした美容室オーナー向けコンサル開業支援をご用意しています(月30万円〜・税別、広告費は別)。30分のオンライン無料相談では、その場で契約を求めることはありません。

よくある質問

美容室の2店舗目を出すとき、顧問はどこまで手伝えますか?

物件探しや工事の前に保健所へ相談する、開設届と検査の日程から開店日を逆算する、といった段取りづくりは手伝えます。構造設備が基準に合うか、届出書類が適切かの判断は、所在地を管轄する保健所に確認するよう案内してください。手続きの時期や手数料は自治体ごとに異なります。

管理美容師はどんなときに必要ですか?

美容師法第12条の3により、美容師である従業者が常時2人以上いる美容所には管理美容師を置く必要があります。東京都の案内では、免許を受けてから3年以上美容の業務に従事し、知事が指定する講習会を修了した人が対象とされています。

「通常価格8,000円→初回4,000円」と表示してもよいですか?

比較に使う「通常価格」で実際に一定期間販売していれば、問題になりにくいとされています。消費者庁の価格表示ガイドラインの考え方では、ほとんど販売実績のない価格を比較対照にすると不当表示のおそれがあります。迷う場合は弁護士に相談してください。

店販のシャンプーを「髪のダメージを修復する」と紹介できますか?

化粧品の効能として広告できる範囲は厚生労働省の通知で決められており、「毛髪のつやを与える」「裂毛、切毛、枝毛を防ぐ」などが挙がっています。「修復する」はこの範囲にない表現です。個別の可否は、都道府県の薬務担当課や保健所に確認してください。

業務委託の美容師なら、労働時間のルールは関係ありませんか?

契約の名称が業務委託でも、出勤時間や施術の進め方を店が細かく決めているなど、実態が労働者であれば労働基準法などが適用されます。判断は実態から総合的に行われるため、社会保険労務士や労働基準監督署に確認してください。

自分の顧問サービスの広告で「売上アップ」と書いてもよいですか?

根拠なく成果を約束する表現は避けましょう。景品表示法は、サービスの内容を実際より著しく優良と示す表示を禁じています。取り組む内容や進め方を具体的に書くほうが、信頼にもつながります。

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